注意の能力と同様に,記憶の能力もいくつかに分類することができます.覚えることが困難なのか,あるいは思い出すことが困難なのかによって,その症状が異なってきますし,対処方法も違ってきます.
代表的なものとしては,覚えておく時間の長さによって短期記憶と長期記憶に分類する方法があります.
その場で言われた電話番号を覚えておくなどの数十秒のごくわずかな間の記憶です.
今朝,どこで何を食べたかといった一日の出来事を覚えておくだけでなく,小学校のときの修学旅行でディズニーランドに行ったなどの昔の思い出を覚えておくことに関わります.
思い出のほか,学校で習った事柄やこれまでの経験によって蓄えた知識も長期記憶ですし,自動車の運転の仕方などの運動に関わる記憶も長期記憶です.
私たちの記憶は,ものを覚える段階(専門的な用語では符号化とも言います),覚えたものを覚え続ける段階(貯蔵),そして思い出す段階(検索)の3つの段階に分けることができます.
私たちが覚えるべき情報は頭の中で処理しやすい形に変換します.符号化された情報は,頭の中で整理されたりまとめられたりして永久的に貯蔵されます.ですから,符号化は記憶の入り口となるところなので符号化に失敗すると記憶は定着しません.
符号化の失敗は,注意の問題に関係していることがあります.隣の話し声に気が気になって,目の前の覚えるべきことをうまく覚えられなかった,郵便に目を通しながら鍵を置いたら鍵を置いた場所を忘れてしまった,などがこれに当たります.
検索は,思い出す段階をさします.この段階に問題のある人は覚えることはできるけれども,それを頭の中で検索できません.ですから,情報をうまく検索できるような手がかりを有効に利用することが重要になります.
覚える内容が何かという点に注目して,その対応方法を考えて見ましょう.私たちが覚える情報は見て覚える【視覚的な記憶】と言葉による【言語的な記憶】の二つに大別することができます.
記憶に問題がある人は,何でもかんでも覚えられないというわけではなく,覚える内容によってはよく覚えられるということもあります.
目で見て覚えるといった,視覚を介して事柄を記憶すること.覚える事柄をリストで作ったり,新しい情報を覚えるとき絵で見て覚えられるかで判断することができます.
言葉による聴覚を介して事柄を記憶すること.覚えた事柄が言葉で話していた事柄であったり,新しい情報を声に出して読んでもらい覚えられるかで判断することができます.
上記の二つの違いのとおり,見て覚えることは得意だけど言葉で覚えるには難しい,あるいはその反対といったことが生じることがあります.
記憶に問題があるからといって,全ての事柄の記憶が難しいと決め付けず,どんな情報だったら覚えられるのかについて,日ごろの行動を観察することが重要です.そして,どちらかの記憶が比較的に優れているかを判断して対応しましょう.